冬の北海道編~①北の大地で教わった事~ |
2007年3月7日 北海道・旭川 (旅程:2007年3月7日~8日) 今回の旅行の目的は、白銀の大地の風景を撮影するということだった。 でも、旅によくあるように、自分を最も感動させてくれたものは、 当初予想していた白銀の大地ではなかった。 それは、日本有数の酷寒の地、旭川にあった。 そう、旭山動物園である。 南極でペンギンと戯れ、アフリカのサファリで生のライオンやゾウと 対面した自分でもなお感動させてくれたこの動物園には、 心の底から賞賛の拍手を送りたい。 僕が、旭山動物園に感動した点は2つである。 1つ目は、これまで見たどんな動物園とも比べ物にならないほど 動物がいきいきとしていたこと。 2つ目は、この仕掛けを作った人々が、利益企業ではなかったこと、である。 僕は、この旭山動物園に行く一週間前に、東京の上野動物園に行った。 旭山動物園がニュースに出るとき、よく比較されるのが 日本最大の入場者数を誇っていた東京の上野動物園である。 首都圏にありながら北海道の僻地にある動物園に負けるなんて どんだけつまらない展示をしているのかと思ったのだが、 実はこれがそれなりに工夫されていて案外面白かったりする。 虎やオラウータンの展示室は、彼らの住んでいるジャングルの環境が 再現されていたり、観客のガラスの目の前にえさがまかれていて すぐ目の前を虎が通ったりする。 でも、珍しい動物に目が慣れてくると思うのは、 動物達の無気力さ、である。 展示の目玉の一つであるはずの白熊などは、 うつろな目をして、展示場の中で左右に往復運動を繰り返している。 何か、見ているこちらのほうが、気の毒になってきてしまうのである。 でも、この旭山動物園の動物達は、全く違う。 同じ檻の中にいるにしても、本当に生き生きと動き回り、 見ている人間達とのコミュニケーションを楽しんでるのである。 アザラシは、明らかに人間に関心を持って手の届きそうなところまで 泳いで来ては、顔を水面に出して挨拶していくし、 白熊たちは北海道の寒冷な空気で元気を得ているのか、 プールにダイビングを繰り返し、ガラスにべったり張り付いて 人間をじっと見てる。 ペンギン達も水中から見ると、陸上の鈍さとは比べ物にならないほど 生き生きと水中を動き回る動物ということが一目瞭然である。 動物達がいききして動き回っていると、見ているこっちも本当に 元気をもらえる。 もう有名すぎるほど有名な話だけれど、 この旭山動物園は、わずか10年前には入場者数が現在の 10分の1程度にまでしぼみ、閉鎖の危機が叫ばれていた。 旭山市をドライブすれば分かるが、それほど大きな都市でもなく、 活気があるわけでもない。100万都市の札幌からも2時間かかる。 こんな土地で、動物園を経営し、V時回復をしろといわれたら 目の前が暗くなるのが当然である。 でも、その状況から、見事に立ち直った。 特別なマジックを使ったわけではなく、できることから始めていったのだ。 まず、自分達の最大の資源である寒さを生かし、 寒冷地の動物達に展示をフォーカスし、 彼らを大切に、生き生きと活動する出来るようにさせてあげた。 世に言う、動物達の行動を見せる、行動展示へのフォーカスである。 そして、それが、見るものに元気を与え、そしてそこに働く人達にも 大きな力を与えることになった。 この動物園に来れば分かるが、満員の展示の交通整理をする 地元のおじさん、おばさん達までが自分の仕事に誇りを持って生き生き として働いている。 この旭山動物園の入園料は、たったの600円である。 そして、園内の至る所にある動物の紹介表示は、 すべて手作りのかわいらしいものであり、 極力コストを抑えつつ楽しんでもらおうという強い意思を感じるのである。 営利企業でないこの動物園が利益を上げても、 その結果が金銭という形で従業員に還元されるわけではない。 にもかかわらず、彼らが積み上げてきた一つ一つの涙ぐましい努力と、 それがもたらした、展示に群がる山のような人だかりを見た時、 感動で涙が出てきた。 北の国で成し遂げられた偉業に、心から拍手を送りたい。 |
by yuheihosono
| 2007-03-16 01:16
| 日本最良の風景達
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