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2006年2月から4月で南極・南米を周りました。7大陸訪問達成!連絡先は以下でお願いします yuheihosono@hotmail.com
by yuheihosono
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2006年 06月 08日 ( 1 )

最期の時間

金曜日の晩、夜七時ごろ叔父から電話がある。
「危険な状態になりつつある」

祖母が入院して以来初めて、一日二回目の病院訪問。
病院に着くと、親族が全員集合している。

従妹から数値データーを聞く。上の血圧が40程度とのこと。
2日前の最高血圧が160だったのだから、どのくらい異常な数値かは
専門知識が無くても分かる。60を割り込むと、きわめて危険な状態との事。

医学的な見地からは、回復の見込みはなし。
僕の到着前に医師からの説明はそうあったらしい。

その後、血圧は悪いながらも60ぐらいで安定してきた。
長期戦になる可能性も考え、祖母の長男と僕は病院に残り、
他の親族は翌朝来ることになった。

母の帰り際、僕はあまりの数値の悪さに、今帰れば死に目に会えない
覚悟をする必要があると伝えた。母は、その覚悟はできていると答え、
祖母に「間に合わなかったらごめんね。」と話しかけた。

母はお店の経営者である以上、長期戦になって倒れるわけにはいかない。
60年来の知己である、親の死に目に会えないかもしれない、という決断。
祖母が一人で切り盛りしてきたお店を受け継いだのが母であり、4兄妹ただ一人の
娘として、他の男兄弟とは別の母と娘だけの思い入れがあるはずである。
でも、死に目に会えないという、究極のリスクを潔く受け入れた母。
その決断には、心動かされるものがあった。

その後、容態は非常に悪い状態ながら安定を続けた。
火のように熱い右手を握りながら、眠りに落ちそうになる。
自分の幼少時、幾度と無く自分が眠っているのを見守り続けてくれた
人を、ついに自分が見守る側になった。
「ここまで育ててくれてありがとうね。もう一人で大丈夫だよ」
心からお礼を言った。

午前4時半過ぎ、母から電話が入り、もうすぐ家を出る旨連絡がある。
どうやら、祖母はみんなが来るまで持ちそうだと、安堵する。
祖母に「がんばれ、がんばれ」と声をかけていたら、叔父が「
もうがんばらなくていいよ、一生懸命がんばったもん」と言った。
返す言葉が無かった。

午前5時28分過ぎ、血中酸素飽和度が91から97へと劇的に改善を示した。
同時に、120ぐらいあった心拍数が60ぐらいへと落ちていった。
一見、数値が劇的に改善していくかに見え、叔父と顔を見合わせた。

午前5時30分、30分毎の定時の自動血圧測定が開始。
が、突如すべてのデーターが読み取り不可を示し、心拍・血圧・酸素飽和度の
グラフの凹凸が消えた。警報音が鳴り、看護婦が駆けつけてきた。
「他のご家族が来るまで持たせますか?」看護婦が必死の形相で聞いてきた。
すでに延命治療を行わない旨一族申し合わせができていたが、
こんな急激な心肺停止は想定していなかった。
叔父と手分けして親族に延命措置をするかを確認。
全員、延命措置をしないということで了承を取る。
この緊急時に祖母の苦痛を増やさない
という判断をしたこの一族の決断力は、本当に見事だった。

電話が終わるや否や、すぐ祖母の戻り、祖母の右手を握り締めた。

アメリカ留学中、自分と兄弟の様に過ごしてきた犬の死に目に会えなかった。

それは、自分にとって生涯最大の痛恨事となっていた。
それ以来、自分の親族のの最期には何があっても立ち会うと、
自分の心に誓っていた。その誓約を実行する時が来た。

医師が到着し、死亡宣告をしたのが5時47分。
それまで蘇生処置は行わず、ただ命の灯火が穏やかに消えていくのを見守った。
一族そろうことはできなかったけれど、長兄と初孫に囲まれながら、
祖母は静かに旅立っていった。

祖母は、無類の元気さとパワーで一族に元気を振りまきながら、2週間前に突然入院。
そして、わずか一日の覚醒期間の間に、僕に遺言らしきことを言い残し、
2週間の心の準備期間を親族に与え、89年の生涯を終えた。
こういう最期でありたい、とこちらがうらやんでしまうぐらい、見事な最期だった。

ばあちゃん、本当にお世話になりっぱなしでした。
最期しか一緒にいられないで本当にごめんね。でも、最期あれだけ濃密な時間を
過ごせて僕は本当に幸せでした。今まで、本当にありがとう!
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by yuheihosono | 2006-06-08 03:40 | 日常