南極・南米旅行記 第24日目 トレッキングパラダイス |
2006年3月19日@チリ・パイネ国立公園 今日は、パイネ国立公園でトレッキングを行ってきたのだが、 本当に大変な一日だった。 実は僕はパイネ国立公園の予備知識というものは、 ほとんど何も持ち合わせていなかった。 この公園を訪れたのは、ロンリープラネットの南アメリカで行くべき 観光地リストのトップのほうにこれが入っていたからである。 僕を良く知る友人達程、僕のことを冒険中毒で、 トレッキングマニアだと勘違いしている節がある。 確かに、色んな所でエベレストのベースキャンプまでトレッキングしてきました! といって宣伝しているので、誤解を受ける理由は十分にあるのだが、 僕はトレッキング自体はかなり苦手である。 登りは出来るだけ車でいけるところまで行きたいし、 宿泊はテントよりホテルのあったかいベットで寝たい。 でも、すばらしい山岳写真を撮るためにはどうしてもトレッキングが 避けられないのである。 なので、不本意ながら、般若のような形相で山を登り、 膝を笑わせながら山を下ってくるのである。 このぐらいトレッキングが苦手な自分がトレッキングの 総本山に来たのは根本的に間違っているのかもしれないが、 「世界を代表する山岳風景」というマーケティングのキャッチフレーズに 負けてまたトレッキングをすることになった。 朝、プエルトナタレスの町を出発し、 宿のお姉様に2時間のドライブといわれたパイネ国立公園への道へと向かった。 まず、ここからが誤算の始まりだった。 さすがに、チリで一番有名な観光地への道ということで てっきり舗装道路だと思っていたのだが、 ほとんどが未舗装道路だったのである。 そして、こちらでは地元の人々は、パリダカのような 猛スピードで未舗装道路を駆け抜けていく。 2日前にマニュアル車の運転を覚えた僕が同じ事をすれば、横転間違いなし。 ということで、2時間でつきますよというアドバイスは、 僕にとっては3時間以上を見なければいけないということを意味した。 しかも、前日は大雨であったらしく、いたるところで道が水没している。 ということで、スプラッシュあり・ジャンプありの日本ではありえないような ダカールラリーの様なドライブをしながら、何とか3時間で公園に着いた。 パイネ国立公園に着くと、 なんとあの南極旅行で一緒になったインド人カップルを発見。 僕より一時間前に出発したので、彼らはとっくに公園内のはずだったのだが、 悪路でバスが故障してこの時間まで到着が遅れたらしい。 でも、残念ながら彼らはWコースと呼ばれるパイネ国立公園の主要名所を 一通り回る5日間のトレッキングコースに参加するため入り口で別れ、 僕はトレッキングコースに向かった。 予定より2時間遅れでのトレッキング開始であった。 日暮れ前に着くためには、「標準的な」トレッカーで7時間といわれるコースを、 予定通り消化して、やっと日暮れ前につけるかどうかというスケジュール。 ライトも持たない僕は、広大なパイネ国立公園で遭難する羽目 になるからである。虚弱体質なトレッカーの僕でも一体間に合うのか? 4時間で目標につけなかったら、その場で引き返す作戦を立て、登山を開始した。 今回のトレッキングの目標は、Three Systersといわれる パイネ国立公園の目玉となる山の目の前に広がる湖である。 そしてまったく下調べをしていない僕には、 どんな風景が広がるのか皆目検討もつかなかった。 トレッキングのコースは、基本的に7割が登りのコースという なかなかにキツイものだった。 そして、ここを通るんですか?というぐらいうっそうとした森を通り抜けたり、 森と河が接するぎりぎりの小道を通っていくのである。 非常に頻繁かつきれいにつけられたペンキのマーキングのおかげで それほど心配は無かったが、マーキングが無ければ普通に遭難するぐらい の手付かずの森の中や河のせせらぎの部分を通り抜けていく。 南米最高のトレッキングコースといわれる割には、 意外とトレッカーと出会う数も少なく、ちょっと不安になったりもするが、 大自然と自分が向き合える時間が本当に多く、 のぼりの急勾配のところ意外は僕ですら本当に楽しめた。 トレッカーにとっては確かに天国とも言えるような美しいところである。 目標の湖への道のりは、4時間弱できっちりついた。 やはり、人間追い込まれればやるものである。 目標である湖への道のりまでに、 スリーシスターズといわれる山がどんどん近づいてきて、 確かにきれいだが、別に南米最高の山岳風景というほどとは思わなかった。 が、湖の手前の丘を登りきったところで、 まったく意表をつくような風景が広がった。 湖はカルデラ湖のようなもので、 湖の周りから垂直に数百メートルの高さでスリーシスターズと その周囲の山が切り立っているのである。 絶景である。 惜しむらくは、太陽がスリーシスターズの後ろにあるため、 光がスリーシスターズに当たらないことであった。 朝日にあたるスリーシスターズはすばらしいからキャンプをするべきだ、 とインド人カップルがくれたアドバイスをいまさらながらに思い出した。 ここで朝日を迎えたら、本当に最高の風景だろうに。。。 名残惜しかったが、帰り道で日没は絶対に避けなければならない。 マーキングが見えなくなれば遭難のリスクがある。 30分ほどで岐路につくことにした。 帰る直前に、山頂にて非常に面白い出会いがあった。 台湾出身の女の子(27歳)で、一人で南米を一周しているのだという。 日本人の女の子でも長期旅行となるとまれで、 単独旅行となるとごくまれになってしまう。 いたとしても、40代ぐらいの肝が据わった方が多い。 ましてさらに保守的な傾向の強く、収入が一般的に日本より劣る アジアの女の子が一人旅というのは初耳だった。 どうも話を聞くと、元々歯科医をしていたので、 お金は自分で旅費を出せるぐらいあるのだという。 そして、旅の動機は、あまりにも仕事に忙殺されていたので、 自分の生まれてきた意味とかを見出す時間が欲しかったという。 いや、世界中どこも旅をする理由には共通点があるものである。 でも、女性で南米一人というのは本当にたいしたものである。 でも、それだけ、肝が座ってれば、何でもできるだろうな。 自分へのエールという意味も含めて、お互いに頑張ろう、といって麓で分かれた。 麓に到着した頃には7時になっていた。 日は大きく西に傾き、どう考えてもナイトドライブになることは確定だった。 内心かなりビビッていた。 昼間でダカールラリーの道を、夜中に走る? 3年前にアフリカをナイトドライブをした時に、 もう二度と発展途上国の未舗装道路を夜間ドライブすまいと誓ったのに、 悪夢は繰り返された。 夕暮れの中に佇むパイね国立公園の山々を背に、帰り道を急いだ。 地平線が紫に染まる風景は本当に表現しきれないほど美しい。 こんな緊急の状況でなければいつまでも見とれていたい風景である。 やがて、日はとっぷり暮れた。 ヘッドランプ以外は何も見えない。自分の前100メートルと、緑色に 光る速度計だけが自分の見える世界。これが、何十分と続くと ドライブしていると言う感覚が麻痺してくるのである。 でも、突然道からウサギが飛び出して車と併走したり、車の前でぴたっと 止まって轢かれそうになったりと、それなりに刺激を与えてくれる。 でも、これが大型の鹿だったりするとこちらの身も危ない。 ダートロードなので、急ハンドルは横転のリスクがある。 また、巨大な石にも注意しないと、突然パンクの可能性もある。 恐怖に耐えながら、でもふと空を見上げると、とんでもなく美しく 南半球の星達が瞬いている。 自然は厳しければ厳しいほど、その美しさをあらわにもしてくれる、 そのことをまた思い出した。 ということで、3時間、本当に必死に走りました。 町の明かりが見えた時は、本当にうれしかった。 かつて、闇夜のたいまつの光は人類に希望そのものだったというのは、 この状況なら実感を持って分かる。 宿に着いたのは夜10時過ぎ。 本当に、もう、ナイトドライブはしません。 |
by yuheihosono
| 2006-07-12 19:17
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